3/21(日) ロゼシアター 『西本智実 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団』 2/3
(1/3からつづく。)
軌道修正。
本日のプログラムです。
●シベリウス/交響詩「フィンランディア」
●チャイコフスキー/バレエ音楽「くるみ割り人形」より抜粋
・小序曲
・行進曲
・トレパック
・アラビアの踊り
・中国の踊り
・葦笛の踊り
・アダージョ
・花のワルツ
~休憩~
●ショスタコーヴィチ/交響曲第5番「革命」
・第1楽章:モデラート
・第2楽章:アレグレット
・第3楽章:ラルゴ
・第4楽章:アレグロ・ノン・トロッポ
アンコールは、曲名忘れました。
(丸尾先生がソロでよく演ってる曲なんですが・・・。(苦))
先のチラシのコメントだと もうちょっと『くるみ割り人形』色が強いのかとも思っ
たのですが、そうでもなかった。
あのコメント自体が本公演のコンセプトとして けっこう重要な意味がありそうなの
に、HPの告知ページにもプログラムにも一切 出て来ない。
この辺りの謎(というほどでもありませんが)は、後ほど解けるのでした。
『くるみ割り人形』で思い出したのが 写真右の「モーリス・センダック」の絵本。
もう15年ほど前になりますが、いろいろな絵本を買い漁っていた時期があり、その
ころ購入したものです。
絵本とはいってもかなり分厚く読み応えがあるものですが。
当時、「クリスマスの話だから、クリスマスが近くなったら読もう。」と思ったこ
とは覚えているのですが、読破した記憶がない。
今回の演目に合わせて『くるみ割り人形』のストーリーを予習しておこうと思い立
って、久~々に本棚から取り出しました。
絵本を開いてみると、カビ臭い! 図書館の香り。
なんと、本編部分の2ページ目と3ページ目の間に しおりが挟んであるじゃないか。
「読みかけ」にもほどがある!!
公演前日になって慌てて読みましたが、たっぷり2時間。
たまたま持ってた「シャルル・デュトワ」指揮の全曲入りのCDを聴きながら。
当初、私の浅~い認識では、
「もともとあった『くるみ割り人形』のストーリーに センダックが挿絵を付けた
絵本。」
というくらいのものだと思ってたのですが、もっと深~い意味がありました。
絵本の『序』の部分にこの本が発行された経緯が書かれていました。
要約するのもむずかしいのですが、
・センダックが1981年にバレエ『くるみ割り人形』の舞台デザインを手掛けた
際の、ステージデザインと衣装のために描かれたスケッチを元にした絵本。
・但し、一般的に知られているバレエ『くるみ割り人形』は、1816年に書かれ
たドイツ人作家「E.T.A.ホフマン」の原作とは大きく乖離したものになってい
る。
・センダックは、この舞台に出来る限り原作の要素を取り込むべく、デザインと
演出に尽力。
・さらに、絵本は 原作版の「新規 英訳」がベースとなるため、バレエでは省略
されている物語の核心に関わる部分のイラストを改めて描き下ろした。
といった流れがあったようです。
しかも、これまでのバレエは(私は観たことないのですが)子ども向けの甘~い演
出(正に『お菓子の国』の場面など)があまりに常套化していて、センダック的に
はウンザリだった模様。
原作の持つダークな側面を正しく捉え直したいといったところでしょうか。
この、「物語の核心」というのは原作の中に登場する『かたいくるみの物語』とい
う物語内物語で、ストーリーが二重構造(もしかしたら三重?)を成しているので
すが、バレエで語るには複雑過ぎてバッサリ落とされているようです。
物語の結末はファンタジー目線で捉えると「めでたし、めでたし」なのですが、翻
って あくまでリアル目線で解釈すると、なんとも救いのない話ではないかとも思え
ます。
(因みに、バレエでは主人公の少女は「クララ」のようですが原作ではマリー。
クララはマリーの所有する人形のうちのひとりです、)
私の場合はバレエの方はすっとばして今回初めて原作(の英訳の和訳!)を読んだ
わけですが、先出のチラシのコメントの意味がちょっと分かったような気が。
西本さんがこの「原作回帰」の流れに沿って新たな解釈を加えたということではな
いかと(勝手に)想像します。
単に甘~いおとぎ話ではなく、『子どもと大人の相克』という重いテーマをバック
グランドに据えた新解釈。
(3/3につづく。)